いっしょにくらそうか、とフランは言った。
「どこで?」
真夜中のハンバーガー店はとてもしずかだった。テーブルにつくひとはあたしとフランしかいなくて、レジカウンターから死角になっているその席であたしたちはまるでふたりきり。100円のコーヒーを見おろして、フランはながい足を椅子からはみださせてくみなおす。ついたほおづえはけだるげな雰囲気をつくっていて、目元もそれとたがわずねむそうだった。
「私のうちじゃいやかしら」
「あたし、フランのうちにいったことないからわからない」
しっていることなんて、片手でたりるほどすくなかった。バッシュさんのしりあいであることと、とてもたくさんお金をもっていること。日付がかわりかけたころに急によびだしの電話をかけてきて、そのころにはもうあたしの家のまえに車をとめているような勝手なひとだということ。
「フランは、あたしとすんでどうしたいの」
「どう、って。……」
フランが思案顔をつくる。ふわふわと、フランのまえにあるカップから湯気があがっていた。あたしは手をつけていないオレンジジュースからのびているストローをつめではじいて、いったいなにをしているんだろうと思った。あたしはたぶんフランがすきで、それは、フランがあたしをすきだと言うからで。
「じゃあ、ずっと南のほうに引っ越すってのはどうかしら」
さっきの質問にはこたえもしないで、また足をくみなおす。フランは、わたしのしりたいことはひとつだっておしえてくれない。それはきっとあたしのたずねることがどれもこれもフランにとってはとるにたりないくだらないことだからで、そうやってあたしたちはかみあわない。
「……フランのうちがいい。いまからいきたい」
ことわってくれればいいと思った。あたしはフランがすきで、フランは、あたしとかみあわない。あなたは、その点についてどう思いますか、あたしは、それがとてもとてもつらいんです。
「私の部屋はちらかってるから、あなたが片づけることになるわよ」
「どうしてそうなるの?」
とてもしずかな空間で、あたしたちの会話もさみしいくらいおだやかだった。いまのって、フランの家につれていってもらえるということなのか、それとも片づけはいやだろうからくるなということなのか。あたしには判断がつかなくて、もうここをでたいと言いだせない。
09.11.07
067:ねえ、わらって
068:きみにあずけた
069:しろいつめ
070:あまやどり、あなたにかさを