076:いつもいつも





077:あきらめたくなかった





078:こがれて(澪と律/けいおん!)
 ふと目にはいってしまっただけ、っていう話。

「あついよ」

 ぱたぱたとプラスチックの下敷きをゆらしていて、そのたびに律のほほのよこにある髪もゆれた。もうそろそろ夏休みもおわりで、そんななかの部活の帰り道はまだまだあかるい。

「ことしってそんなにあつくないよ」
「でもあついって」
「そりゃあ夏だから……」

 ひとどおりのすくないそこには私たちしかいなくて、じんわりとした空気が肌にくっつく。こい影が足元の道路におちてのびていた。私のほうがながい、律のは、ちょっとみじかかった。

「アイス買って」
「自分で買えば」
「澪ってほんとけち」

 律が理不尽なことを言っているんだけど、ぼおっとしていく私の思考はどうやらそのへんでとぎれてしまったらしい。言いかえしもしないまま、私の視線は釘づけ。うすっぺらい制服の襟元、すずしげにあけられた、そこから見えた。

(律っておっぱいない)

 身長差のせいだった、しかたないのだ。ふと見おろしたさきにあるのは、とてもとてもささやかな谷間もどき。

「じゃーあれ。パピコ。あれはんぶんちょうだい」

 いつのまにか私がアイスを買うことは決定していて、もうすこしあるいたらコンビニがあるのだった。あついあついと言うとおり律はすこし汗ばんで気だるげで、なんだか私は、見てても全然おもしろくないはずの律のちいさなおっぱいから目がはなせない。

「……ぎゅぎゅっと、ってやつならいいよ」

 おねがい、全然視線をそらせられる気がしないから、絶対こっちに気づかないで。だから必死にそんなことをかんがえていたせいで、私は不覚にもまったく余計なことを言ってしまったのだった。
09.10.01
りっちゃんの ささやかなたにまにこがれる みおちゃん





079:いらないもの





080:どこまでもつづく