081:きいてください





082:あわゆき





083:なみにさらわれる





084:ことのは(綾那と順/はやて×ブレード)
 順がかえってこないからさがしにいった。場所の見当はついていたしそこは寮からさほどはなれていなかったのでかんたんにばかは見つかった。ばちゃばちゃと、とけて水になりかけた雪がくつのうらがわでつぶれている。あたりはもうくらい。

「ごめんね」
「なにが?」

 けんかをした。順はきゅうにナーバスになって意味不明におこりだすことがあって、そしたらわたしだって言いかえしてしまう。どんな言いあいをしたかはすっかり忘却のかなただけど、きのうもおなじことをしたことはおぼえている。そのときはわたしがこの公園のベンチにこしかけて、順がわたしを見つけたのだ。そのときも順がごめんねと言った。わたしはことばがうまくつかえないから、なにか話をするのはいつも順だ。
 マフラーも手袋も気にしてなかったわたしとちがって順は完全防備で、うつむきっぱなしのこいつのとなりはあいている。まるですわってくれとでも言っているようで、だけどわたしはそこから目をそらして、ベンチのとなりですっかりういているほどちかちかしている自販機に小銭をいれた。おしるこ、とひくい声が言うからおなじのをふたつかった。冬のなかにいることを実感するなと思った。

「ごめんね綾那」
「だからなにが」

 あしたもおなじことをするのだろうか。そしてわたしは、またごめんねを言えないのだろうか。順はどうしてそんなかんたんにことばをはなせるのだろう。ごめんねって、そんなたやすくしゃべれるものだったなんてしらなかった。
 おしるこはあまくておいしかったけど、順のとなりは居心地がわるくてしかたがないのだ。
08.08.20
はるかむかしにいただいた綾順リク





085:きみがいない